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2009/07/20

映画「ディア・ドクター」感想

ディアドクター
「ディア・ドクター」見てきました。ユーモアーも交えつつ終末医療や僻地医療の問題を温かく描き、さらりとした描写で登場人物の心理が分かる、こういうのが邦画の良さだなぁとしみじみと感じる映画でした。
美しい田舎の映像のもと、西川監督の脚本・演出とキャストのはまり具合が絶妙で、見てる間は何が罪で誰に資格があるのかと色々考えさせられ、見終わったあとは爽やかで温かな気持ちになりました。
今年見た邦画では間違いなくNO.1です。

ストーリーは「山あいの小さな村。数年前、長らく無医村だったこの地に着任して以来、村人から絶大な信頼を寄せられている医師、伊野治(笑福亭鶴瓶)。そんな彼のもとに、東京の医大を卒業した青年・相馬(瑛太)が研修医としてやって来る。最初は僻地の厳しい現実に戸惑い、困惑する相馬だったが、村の人々に親身になって献身的に接する伊野の姿に次第に共感を覚え、日々の生活にも充実感を抱き始めていく。そんなある日、一人暮らしの未亡人かづ子(八千草薫)を診療することになった伊野。病気のことを都会で医師をしている娘に知られたくないからと、かづ子から一緒に嘘をついてほしいと頼まれる。しかし、それを引き受けたばかりに、伊野は次第に追い込まれていくことになり…。」というものです。

きのうの神さまきのうの神さま
平成21年/2009年4月・ポプラ社刊
西川美和
『ディア・ドクター』に寄り添うアナザーストーリーズ。 第141回直木賞の候補にもなりました。


実は、鶴瓶がネタバレしているのを聞いていたので、勝手にストーリーを想像しスルーしていました。あまりに皆さんが絶賛していたので「"ゆれる"の監督だし、どんなもんか見定めてやろう」みたいな偉そうな気分で出かけてきましたが、西川監督凄いです。先日35歳になったそうですが、34歳でこの脚本にこの演出、人間を深く優しく描いていて老成ぶりに驚きました。

ともかくストーリーが巧みで、しかもそれぞれの心理描写がセリフじゃなく表情や映像で描かれています。
ひっくり返ったコガネムシがもがいているところでは神のように崇められた偽物の葛藤、シンクで溶けるアイスでは娘のショックの大きさなど、それぞれの心象風景が良く伝わってきます。
逆に伊野とかづ子のシーンでは表情を見せないで二人の背中を延々と撮し、最後にやっとかづ子の表情を見せるためにためた演出で、否応なくかづ子の気持ちに引き込まれ、伊野が一緒に嘘を引き受ける気持ちが良く伝わってきます。
他にも、冒頭の死にかけたおじいちゃんのシーンでお嫁さんのぎゅっと握ったげんこつで介護に疲れている家族だとさりげなく描き、かづ子が二度目に野球を見てるシーンで伊野を信頼しているのが伝わってきて、かづ子の夕食が進まない様子で病状を見せ、夫の病室の写真で終末医療で大変な思いをした過去を見せ、電話のシーンで思わぬ伊野の背景が見えてくる、こういうさりげないシーンがとっても上手いです。

また小物使いがとても巧みです。プラゴミのアイスの袋を分別収集のゴミ箱に捨てようとして薬の外装を見つけるシーン、これが普通のゴミ箱だったらご都合主義に見えるんだけど、そうじゃなくて分別収集のゴミ箱(小さな自治体ほど焼却炉の性能が低いので分別収集が細かく、プラゴミは燃えるゴミに比べ溜まりにくいため前のゴミが良く見える)だってところが素晴らしいですね。細かい所までしっかりリアルな作りが物語を更に深い物にしています。

またカメラがとても美しくて、棚田の青い稲穂を揺らす風、田舎の漆黒の闇と蛍のように光る自転車のライト、伊野のペンライト、白衣、駆け抜ける赤いスポーツカーという色合いも美しかったです。

キャストも全員はまってます。鶴瓶は顔が笑っているのに目が笑っていないと以前から思ってましたが、その二面性がこの伊野という人物にぴったりです。
八千草薫の清楚さ、瑛太、香川照之、余貴美子、井川遥、松重豊、岩松了、笹野高史とみんな押さえた演技でリアルな人物像を自然に演じていました。
特に瑛太と笹野高史の伊野に対する前半は信頼、後半は自らの保身のため刑事に悪し様に言いながらも心の底には別の感情がほの見える演技が、物事の二面性・人の心の奥深さを見せていてとても良かったです。

そのほかにも八千草薫の口紅シーン、余の気胸シーン、鶴瓶の電話シーン、井川の母を病院に誘うシーン、香川の椅子シーンなど良いシーンが一杯で、心の底から見て良かったな~と思わせる映画でした。

この映画はモントリオール世界映画祭(8月27日~9月7日)のコンペティション部門へ出品されることが決定しています。昨年、「おくりびと」(滝田洋二郎監督)がグランプリを受賞し、その後米アカデミー賞受賞に至った発端の映画祭なので、ディアドクターにも期待したいですね。

一つだけケチを付けるなら、すごく分かりやすい作りになりすぎで、逆に見終わって分からないところがないのが不満でした。なぜ?どうして?が多少残って余韻を楽しむのも映画の醍醐味だと思うのでそこだけちょっと不満です。

特に親元から離れ都会に働きにでている人、親不孝してる気がする人にお勧めです。


監督・原作・脚本:西川美和
撮影:柳島克己
美術:三ツ松けいこ
編集:宮島竜治
音楽:モアリズム
上映時間:2時間7分
出演:笑福亭鶴瓶、八千草薫 、香川照之、瑛太、余貴美子、松重豊、岩松了、笹野高史、井川遥、高橋昌也、中村勘三郎

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映画の感想 | Comments(10) | Trackback(1)
Comment
こんばんは
おお、絶賛ですね。
私も伊野のネタばれ的な事は知っていましたので、
それだけの映画かなと思っていました。
ちょっと浅慮でした。
周りにこぼしたこともあります。なんで伊野がこの役者さんなのって(笑)。
TVでふざけ過ぎているので、そのイメージが先行するのです。
私の「ゆれる」の評価は低いのですが、西川さんに再チャレンジしてみます。

私も、余韻、特にラストの余韻はどんな作品にも絶対欲しいです。

No title
こんばんは!

この映画、鶴瓶を使うって云う時点できわものっぽいとか、話題作り?見たいな印象があったんですけど、ミスキャストじゃなく適役だったっていうことですか。
鶴瓶も監督に答えてきちんと正確な演技ができる素養があったんだ。

>顔が笑っているのに目が笑っていない
この表現良いですね(笑)
わたしも鶴瓶はまさにそんな印象かな。

言葉じゃなく映像で語ろうとする姿勢は良いですよね。映画なんだから絵を見せて欲しいって思うし、ストーリーだけならわざわざ絵にしなくてもそれこそシナリオを売ってしまえばいいわけですから。
No title
絶賛でよかった(笑)
オフィシャル本みたいなのを思わず買ったのですが、これに掲載されてる西川美和のコンテがまたうまいのです。
アイスのカットやプシュッで眼鏡くもるカットもどうやって指示したのかと思ったらコンテそのまま。
映画の人でこんなにコンテを細かく描く人がいるとは知らなかったので驚きました。
最初から完全に見えてるということでしょうね。参りました。
機会あったらぜひご覧あれ。
No title
映画の事を良くご存知なので、
教えて欲しいのですが、

プリズン・ブレイク・ファイナルシーズンの
7話からのレンタルは何時からか、
ご存知ですか?
何故か、ツタヤに問い合わせても、
分からないとの返事なので。
ドラマなので関係ないかも知れませんが。
>エリアンダー さん
そうなんです!TVでのお笑いイメージが強いし他のドラマでもそんなに上手だとは思わなかったんですけど、この作品は自然な感じでした。

ラストはとっても爽やかですよ~。
>薄荷グリーン さん
>鶴瓶も監督に答えてきちんと正確な演技ができる素養があったんだ。

いや~、私もびっくりしました。普段から漫才師を演じているような違和感が鶴瓶にあったんですが、この作品中では素っぽい感じでした。演出の力も大きいでしょうが、もともとの素養もあったんだな~と思いました。

>ストーリーだけならわざわざ絵にしなくてもそれこそシナリオを売ってしまえばいいわけですから

本当にそうですね~。わざわざ人間関係を説明したり、思ってる事を口にする安っぽい脚本だと、がっくりしちゃいます。
>totoさん
はい、totoさんのお陰で見逃さずにすみました(笑)
ありがとうございます。

オフィシャル本があったのですね~。今度探してみます。

>最初から完全に見えてるということでしょうね。
全部の映像が頭の中に出来上がっていて、それを映画にしてるって事ですよね~。凄いですね。
>moon-rainbowさん
いらっしゃいませ。
残念ながら最近プリズンブレイクは見てないのでよく分からないのですが、検索したら
vol.7~8は9/2レンタル開始とfoxjapanのサイトに書いてありましたよ~。
http://video.foxjapan.com/tv/
No title
有難う御座います。
しかし、何故、未だツタヤでは
そのレンタル日が載ってないのでしょう。
FOXと未だ、契約がされていないのでしょうか?
>moon-rainbow さん
6月22日には発表されている情報なのに不思議ですね~。
私の勝手な憶測ではメーカー都合で発売日が変わったりするのでぎりぎりまで載せないとか、あまり先の情報載せても今の売上げに関係ないとか、色々理由があるのかもしれませんね。

ひょっとしたら明言しないことで、moon-rainbowさんに何度も店に出向いて欲しいと思ってるバイトさんがいるのかもしれませんよ~(笑)
恋の花が咲いた時はご報告お願いしますね。

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作「ゆれる」で兄弟のゆれる心情を見事に描いた 西川美和監督の手腕にたった1作品しか 鑑賞していないが驚かされました。 夢から着想を得てそのアイデアを映画に活かす手法。 今回も、この企画のスタートは夢のようです。 映画は、人間を人物をいかに掘り下げていく?...

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